リベラルアーツの大学教育【アメリカの大学入試(SAT)について】
こんにちは。ケンズです。
アメリカの大学に入学するためには何が必要なの?アメリカの大学入試(SAT)について教えてほしい。。試験の内容についても詳しく解説してほしい。。実際の入試問題も見せてほしいって思ってませんか?
本記事はこういった疑問にお答えします。
この記事を書いている私はリベラルアーツの大学卒なので詳しく解説します。
本記事の内容
- アメリカの大学入試(SAT)について
- SATの試験内容
1.アメリカの大学入試(SAT)について
SAT(Scholastic Aptitude Test)とはアメリカの大学進学適性試験のこと。大学で求められる読み書き、数学の基礎知識、ライティングスキルなどを測ることを目的としたテストになります。もし、アメリカの大学に入学するのであればこのSATの点数を受験する大学に提出することになります。これは大学が学生の合否の決定をするときの大事な学力の基準となります。
SATと似た適性試験でACT(American College Testing )と呼ばれるものもあります。しかし、本記事ではSATだけを解説していきたいと思います。
SATの基礎情報
1926年にテストが開始。非営利法人であるカレッジボードが主催。大学の進学率を上げるために作られた標準テスト。アメリカの高校2年生~3年生が対象。試験は2つのセクションに分かれており各試験は200~800満点。合計すると400~1600満点になる。試験時間は3時間。ライティング、クリティカルリーディング、数学のスキルが試される。
「エッセイ」と「科目別の試験」が以前設けられていました。ですが、一部を除いてカレッジボードが2021年に廃止を決定。アメリカ国内では年7回の受験が可能。日本でも受験可能。言語は英語。
SATを必要とする人
アメリカの大学に進学するにはSATの点数を任意で提出します。任意なので必ずしも提出しなくてはならない、というわけではないです。ですが、アメリカの大学入学において合否の基準の1つになるのでアピールポイントになるのは間違いありません。もし高い得点を狙えそうであれば受験を考える余地はあります。
アメリカの高校生が対象なので留学生のほとんどは受験する必要はないです。留学生はTOEFULを受けることになります。
日本とアメリカの大学入試の違い
SATの試験内容について語る前に日本とアメリカの大学入試制度の違いを見るとよりSATというテストの位置付けの理解が深まります。なので、初めに日本とアメリカの大学入試の違いを解説したいと思います。
日本の大学に入学する方法は複数あります。たとえば、「一般選抜(一般入試)」「総合型選抜(AO入試)」「学校推薦型選抜(推薦入試)」「指定校制(旧指定校推薦)」などがあります。
一般選抜または個別の大学を受験する時は学部学科を決めてから受験をするので受験科目が人によって違います。そのため、この段階で文系と理系に分類されることになります。文系であれば「現代文」「古文」「世界史」「日本史」「英語」などが受験科目です。
理系であれば「数学」「化学」「英語」「世界史」「日本史」などになります。めずらしい受験科目としては「英語」と「小論文」だけというのもあります。
そして、一般的な推薦では書類選考、成績、面接、小論文などを見られますがプレゼンテーション、口頭試問、実技などを実施することもあります。さらに、数学オリンピック出場者や帰国子女枠の推薦もあります。
このように日本では「一般入試」または「推薦入試」のどちらかを選べば大学に入学することができるという特徴があります。
一方、アメリカの大学入試は基本的には1つしかありません。それは「適性試験(SAT)」と「推薦」を組み合わせたものになります。各大学によって多少の誤差はありますが求められるものは以下の通り
- 高校の成績証明書(GPA、履修クラスのランクなど)
- SAT(大学進学適性試験)
- 推薦状
- インタビュー
- パーソナルエッセイ(起業、クラブ活動、慈善活動などの経験を記した小論文)
まず、アメリカの大学進学適性試験(SAT)はあくまでテストでどれだけ点数が取れたのかという指標となるものです。この点数を受験したい大学に送ることで合否の基準の1つとなります。なので、日本のセンター試験とは違い一定の点数を取れば大学に受かるという訳ではないです。
試験科目は「リーディング」「ライティング」「数学」など文系と理系科目の両方を受けます。このため文系と理系には分類されません。それはリベラルアーツの大学に入学してからも同じです。文理を分けることなく一般教養を学ぶことが大切だとされているので学生は必修科目として文系と理系の科目を履修することが卒業条件の1つになります。
そして、適性試験(SAT)だけではなく高校の成績(GPA)、推薦状、パーソナルエッセイ(小論文)なども必要になります。
パーソナルエッセイとは学業以外の活動を大学にアピールするための小論文になります。たとえば、アピールポイントとしてビジネスやスタートアップを立ち上げた経験のある人は大学側にとってはプラスに映ります。
私の知り合いでイエール大学という名門大学に入学した人がいます。彼女は高校時代に視覚障碍者のためのテニスクラブの団体を立ち上げたメンバーの1人でした。そしてそのことをパーソナルエッセイに書いたら大学に高く評価されたと言っていました。アメリカの大学ではこの様な資質を持った多様性のある人が好きだったりします。
まとめ
日本は特定の入学方法や入試科目を選ぶのに対してアメリカは総合的に個人を判断するという違いがあります。
日本の大学は推薦で入学する方法が複数あること。「一般入試」または「推薦入試」のどちらかを選べば入学することができます。そして、学部学科を決めてから受験をするので文系と理系に分類されます。
反対にアメリカの大学入学は「適性試験(SAT)」と「推薦」の両方が必要になる。適性試験でも文系と理系科目の両方を受けます。そして、推薦は「高校の成績(GPA)」「推薦状」「パーソナルエッセイ(小論文)」などで大学にアピールします。
2.SATの試験内容
アメリカの大学進学適性試験(SAT)は主に2つのセクションに分かれています。1つは「リーディング(エビデンスベースのリーディング/クリティカルリーディング)」と「ライティング」。2つ目は数学のセクションになります。そして、さらに4つに分類されます。それが「リーディング」「ライティングと言語」「数学(計算機なし)」「数学(計算機あり)」になります。
リーディング
リーディングテストはマークシート式。問題数は52問。制限時間は65分。リーディングは5つの文章から構成されており各文章には10~11個の質問があります。文章だけではなくグラフやチャートなども含まれますが数学的な知識は必要としません。アメリカまたは世界の文学、経済学、心理学、生物学、社会科学などの分野から出題されます。
例題
アメリカの地質調査所が発表した毎年恒例のカリフォルニアラッコ調査の結果によるとカリフォルニアラッコは回復傾向にあるようだ。しかし、ラッコの個体数が全体的に増加しているにもかかわらず、新しい地域への拡大を促進するラッコをサメが食い物にしています。
「主な発見より更なるストーリーがある」と話すのはラッコ研究プログラムを率いる研究生態学者のティム・ティンカー博士です。調査結果に影響を与えているさまざまな要因を調査しています。
たとえば、ビッグサーからモントレーにかけてのウニの急増が中央部で生息しているラッコの増加を説明している可能性があります。そして、サメの咬傷による死亡率がラッコの生息域である北と南で高いことが個体の減少の原因である可能性があります。」
今年の調査結果は過去5年間で年間で2%という増加傾向を示しており個体指数 (調査数の3年間の移動平均として計算された全個体の統計) は2010には2,711 から 3,054 に上昇しました。ラッコの生息域の中心部である南モントレーからカンブリアにかけての地域でウニの数が予想外に急増したことが原因だと考えられる。
個体数は上昇傾向を続けていますが北部と南部では5年間減少し続けておりそれぞれ年に2%と3.4%減少しています。この数字は同じ地域でのサメ咬傷による死亡率の増加と一致しています。
1980年代以来アメリカ地質調査所はカリフォルニアラッコの年間個体数指数を計算し連邦政府に登録されている絶滅危惧種であるカリフォルニアラッコ「Enhydra lutris nereis」の傾向を評価してきました。カリフォルニアラッコが絶滅危惧種保護法に基づく絶滅危惧種リストからの除外を検討されるためには個体数指数が3年連続で3,090 を超えなければならない。
“Numbers Encouraging, but Shark Bites Still Problematic for Sea Otter Recovery.” Published in 2015 by US Geological Survey.
2015年にアメリカの地質調査所が発表した内容は~
- 南部のカリフォルニアラッコは回復の見込みがある。なぜなら、絶滅危惧種にならないことをデータが示しているから。
- カリフォルニア沿岸で活動しているラッコ保護グループの取り組みを裏付けているため非常に重要である。
- 2010年以前に実施されたラッコの個体数調査のデータが含まれていないため決定的ではない。
- カリフォルニアラッコの個体数の傾向が生息域全体で異なっていることを明確にしていないため誤解をやや招く可能性がある。
正解は4。
Source: College Board, Khan Academy
ライティングと言語
ライティングと言語テストはマークシート式。問題数は44問。制限時間は35分。リーディングのテストと同様にまず文章が与えられます。議論の明瞭度、文章の構成、文法、語彙の選択、句読点の用法などの理解が問われます。そして、下線部が引かれている文章を訂正することが求められます。テーマは多岐に渡るという特徴もあります。
例題
以下の文章を見直してハイライトされた部分に最も適したものを選択してください。文章を読んだ後、ライティングの質を最も効果的に改善するもの、または標準的な英語の書き方の規則に準拠するものを選択してください。回答に「変更なし」という選択肢が含まれることがあります。ハイライトされた部分をそのままにしておくことが最善の選択であると思われる場合は変更なしを選択してください。
A subway system is expanded to provide service to a growing suburb. A bike-sharing program is adopted to encourage nonmotorized transportation. To alleviate rush hour traffic jams in a congested downtown area, stoplight timing is coordinated. When any one of these changes occur, it is likely the result of careful analysis conducted by transportation planners.
- No change
- Coordinating stoplight timing can help alleviate rush hour traffic jams in a congested downtown area.
- Stoplight timing is coordinated to alleviate rush hour traffic jams in a congested downtown area.
- In a congested downtown area, stoplight timing is coordinated to alleviate rush hour traffic jams.
正解は3。前の文章のパターンと同じなため。名詞と受動態の組み合わせ。
Source: College Board, Khan Academy
数学(計算機なし)
数学のテストは大学で求められる基礎的な問題が出題されます。数学の計算機なしのテストはマークシート式の問題が20問。そのうち5問がgrid-inと呼ばれる数字をマークシートから自由に選択する問題。制限時間は25分。
例題
x² + y² = 153
y = −4x
If (x, y) is a solution to the system of equations above, what is the value of x²?
- -51
- 3
- 9
- 144
正解は3番。
数学(計算機あり)
数学の計算機ありのテストはマークシート式の問題が38問。そのうち8問がgrid-inの問題。制限時間は55分。一次方程式、データ分析(統計、モデリング)代数、非線形、指数、幾何学、三角法などが範囲となります。
例題
大規模な大学で研究のために助手が心理学の学位プログラムに登録されているすべての学生のリストから75人の学部生をランダムに選びました。助手は75人の生徒に「1日に何分本を読みますか?」と尋ねました。サンプルである学生の平均読書時間は89分でした。この時の推定の誤差範囲は4.28分でした。
次にもう一人の研究助手はこの調査の再現を試みたいと考えています。そして誤差範囲をさらに小さくしたいとも思っています。この時、より小さな誤差範囲を得るために次の選択肢のうちどれが最も心理学の学位プログラムの学生の1日あたりの読書の推定平均時間の誤差範囲が小さくなる可能性が高いでしょうか?
- ランダムで選ばれた心理学プログラムの学部生40人
- すべての学位のプログラムからランダムで選ばれた学部生40人
- ランダムで選ばれた心理学プログラムの学部生300人
- すべての学位のプログラムからランダムで選ばれた学部生300人
正解は3。同じ心理学の学生を対象としてサンプル数を増やすことで誤差が小さくなることが予想される。
SAT Study Guide 2020 – Chapter 20: Sample Math Questions: Multiple-Choice
SATの平均スコア
SATの平均スコアが気になる人もいると思います。カレッジボードの発表によると2021年のリーディング、ライティングと言語の平均は541点。そして、数学(計算機ありとなし)は538点でした。合計すると平均スコアは1088点となります。
アメリカの有名な大学入学者のスコアを見るとかなり高い点数を獲得していることが確認できます。例えば、アイビーリーグの一角であるブラウン大学を見てみましょう。ブラウン大学の公式によると合格した受験者の50%以上は1500~1570点を得ています。満点が1600点なのでかなり高い点数であることが分かると思います。
まとめ
科目 | リーディング、ライティングと言語、数学(計算機ありとなし) |
配点 | リーディング/ライティングと言語(800点)数学(800点) |
試験時間 | 合計3時間 |
平均スコア | 1088点 |
最高スコア | 1600点 |
ではまた